アマゾンの配達員、お疲れ気味?

夜遅く、アマゾンで購入した商品が配達されてきました。荷姿は段ボールひと箱ですが、15キロほどあるけっこう重い荷物です。配達員はその荷物を台車に載せて玄関先に来ました。

私は、受け取りのサインをして、”どこに置きますか?”とでも聞かれるだろうと思いました。でも、彼(といっても私より年上に見える”高齢者”でした)はその場で呆然と立っているだけでした。顔はひどく疲れているように見えました。”助けてくれ”と訴えているようにも感じたので、私は、自分で荷物を持ち上げ、ねぎらいの言葉をかけて台車から下ろしました。自分で買っておきながら、重くてちょっと腰に来ました。
彼は、ほっとしたような顔を見せました。しかし、ひと言も発しないままきびすを返し、台車をガラガラと押して白い軽バンに戻っていきました。

いったい、彼はどんな状況で働いているのでしょうか。
その背景を妄想してみました。

彼は、白い軽バンで荷物を運んできました。
いつもアマゾンの荷物を届けてくれる佐川急便やヤマト運輸などの運送会社は、それぞれ自社のカラーリングを施した車両で荷物を運んできます。彼はそうした運送会社の社員ではないようです。

調べたとところ、アマゾンには直接個人のドライバーと業務委託契約を結ぶ”アマゾンフレックス”という制度があるようです。個人が自分の自動車を使って配送業務を行うのが基本です。
アマゾンフレックスには、”アマゾンフレックス”と”アマゾンフレックスプロ”の2種類があります。
前者は、週に数時間程度の勤務、後者は最大週60時間まで勤務の勤務を想定しています。”副業型”、”専業型”と捉えるとわかりやすいかもしれません。
彼は、このいずれかではないかと思いました。

アマゾンフレックスで働く人は、専用アプリで勤務可能なシフト(アマゾンはこのシフトを”配達ブロック”と呼んでいます)にエントリーする形で業務に就きます。

専用アプリで配達ブロック選択画面を開くと、時間や報酬額が表示されます。
配達ブロックの1ブロックは2時間です。業務は朝8時から夜22時までですが、1日の最大勤務時間は12時間までになっているようです。配達ブロックを選択してアマゾンからオファーが得られれば、その時間業務に就きます。

報酬は、1ブロック4,000円ぐらいだそうです。時給換算で2,000円程度です。
今、うっかり「時給」と書きましたが、これはあくまで「収入」です。アマゾンフレックスは業務委託契約のようなので、この収入の中から業務にかかる経費を支出します。

経費には、配達に使用する自動車の購入・維持費(アマゾンは貨物軽自動車運送事業者として黒ナンバーの取得を求めています。なお、配達に使うクルマが無い場合は、アマゾンのパートナー企業からリースやレンタルもできるようです)、燃料代、業務用自動車保険料、スマートフォンなどの購入費や通信費などがあります。
そうした経費を先ほどの収入から差し引いた残りがグロスの収入です。アマゾンフレックスが副業で、メインの仕事で社会保険料などが支払われている場合はいいですが、専業の場合はここから社会保険料なども支払います。
なんとかなるな、と思ったサラリーパーソンのあなた、要注意です。あなたの給与明細に記載されている社会保険料は大雑把に言って半額です。残り半分は会社が負担しています。アマゾンフレックスを専業にする場合は、その分も自分で支払わなければなりません。

こうして調べると、今日配達に来た彼がひどく疲れて見えた理由が想像できます。
アマゾンフレックスは、初期投資が大きく、また経費のほとんどが固定費です。従って、多くのブロックでオファーを得て働く(業務時間を長くした)方が効率がいいわけです。彼は朝から晩まで、Amazonが許す上限60時間に限りなく近い状態で働いているか、それに近い形で働くことを望んでいるのではないかと思います。
そりゃ、疲れてあたりまえです。ましてや、あの歳だし。

この点、同じ業務委託形式でも、普段使いの自転車やバイクを使用するために初期投資や経費を意識せずに済むUber Eatsなどのフードデリバリーとは構造が異なります(意識されにくいだけで経費が掛かっていないわけではありません。余談ですが、125c.c.以下のバイクでフードデリバリーをしている人は、自分が加入している任意保険が業務使用に対応しているかどうかを必ず確認しておきましょう。簡単に調べたところ、ネット系の安い任意保険はほとんどが非対応でした)。

以上、憶測の域をでませんが、想像してみました。

彼がこのエントリーを見ることは、1万%無いと思います。でも、もしこの憶測がある程度当たっていたら言いたいです。

御同輩、働きすぎもほどほどにしましょうよ。無理して身体を壊したら元も子もありませんよ。

とはいってもねぇ。

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