ちょっとタイトルの付け方を間違ったなと思いました。が、このままいきます。
私は料理番組を見るのが好きです。
昨日もインターネットで、ある料理チャンネルを見ていました。
そのチャンネルは初めてでしたが、個人が動画をアップロードしているようなものではなく、テレビ番組のようにプロフェッショナルな作りでした。
番組のコンセプトは、美味しい料理を家庭で簡単に作るコツを教えるという感じです。
ここから先は、内容が内容なので具体的に書くのを控えます。
画面の中で男性が料理を作っています。
作っているのは和食です。作りながらこの男性が時々説明をします。
それはいいんですが、これがちょっと微妙なんです。
まず、なにをしゃべっているのかよくわかりません。
くぐもった声で時々ぼそぼそとしゃべります。
しゃべっている内容は画面下に字幕が出ているのでわかります。だから、料理チャンネルとしては成立しているんです。だけど…です。
ところが、この男性が使っている包丁がやたらいいんです。
高価な、という意味ではなく、すごくいい包丁をきちんと手入れして使っています。もちろんいい物なので結果的にすごく高価だと思います。私、生育歴上の問題で刃物を見る目は養われています(何故)。この見立てには自信があります。
で、トークはそんな感じですが、道具と手際はおそろしく良くて、どんどん料理が進んでいきます。作っているのは一汁三菜的なものであることが、ここにきてわかりました。
盛り付けにはいると、突然、男性が顔を上げてカメラに視線を向けました。
そしてふっふっふっと笑いました。
なにか面白いことをしゃべって自分で受けているようです。
あわてて字幕に目を移すと、次のように出ています。
「葉皿にかいしきは使わない。だぶるからね」
ちょっと説明すると、料理の下に敷かれているシソの葉や笹の葉などを「かいしき」と言います。
懐紙を折って敷く「紙かいしき」と区別するために、葉を使うものを「青かいしき」と呼ぶこともあります。漢字は「掻敷」です。”(食事を盛る時に)下に敷くもの”という意味です。
ここで男性が話したのは「葉っぱを模した皿に青かいしきをつかうと、葉っぱの上に葉っぱが重なってしまう。だから葉皿にはかいしきを使わずに直接盛り付ける」という意味の、日本料理の作法でした。
一事が万事こんな様子で、男性がなにか話している→字幕を見る、でないと内容がつかめません。
ていうか、かいしきのくだりは字幕を見ても簡略化されすぎていて、普通なんだかわかりません。
「こまったおっさんやなあ、人選ミスとちゃうかこの番組」
とか独り言を言いながら見ていると、料理が出来上がってテーブルに並べられました。
そこに、食べる役が登場します。
関東地方の地下アイドルに似た人がいたように思い妙齢の女性です。
まあ型通りに、美味しい美味しい、ちょっとした工夫でこんなに美味しくなるんですね~、とかいう予想どおりの展開です。
そしてチャンネルは、この女性が食べながらおっさんと会話しているシーンに移り、トークがBGMに入れ替わってエンディングへ向かいます。
そこにおっさんのプロフィールが流れます。
なんと、料理人としておよそ50年、関西の超有名料亭でみっちりと修行された方でした。画面には、その流れを受け継ぐ店で長く板長を務めた後独立、今は自分の名前を冠した店で包丁を振るうみたいなのがずーっと流れていきます。めちゃめちゃすごい人やん、この「先生」。
そう思って画面を見ると、盛り付けが、そんな料理じゃないのにムダに山水になっています。
なんということのない一汁三菜の並びが本膳料理のようにも見えてきます。おそらく錯覚なんですけどね。
この「先生」、番組で料理を作っている時は、そのぼそぼそトークからあまりよい印象はありませんでした。
しかしエンディングでものすごい経歴が紹介されると、突如後光が差して見えました。
これが、社会心理学用語でいう「ハロー効果」です(でいいのかな?)。
※ハロー効果…ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと。
Wikipedia ハロー効果
ハロー効果をうまく活用すれば、みんなすごい人に見えるかもしれません。
といっても、ハロー効果を生むような専門家としての見識もなければ、外見もよくないぽんこつの私はいったいどうすればいいんでしょうか。
ハロー効果っていうと、実際以上(以下)に評価が歪む現象としてネガティブに使われることが多い印象ですが、人事考課ならともかく、誰が見てもすごい人に見えるほどハロー効果を生じさせる実績って、それ自体すごい努力のたまものじゃないでしょうか。無理やん。
ここまで書いて気づきましたが、さっき番組の中で食べる役の女性が「ちょっとした工夫でこんなに美味しくなるんですね~」とか言ってたと書きました。でもそれはたぶんちょっとした工夫なんかじゃなくて、熟練した職員の技の神髄とかじゃないでしょうか。だとしたら、まったく失礼な話です。
サウイフモノニワタシハナリタイ と思いました。