超訳 「マイムマイム」はいかにして広まったか(大阪弁バージョン)

第二次世界大戦の終戦後、荒廃した国土で暮らすわが国の人々は娯楽に飢えていました。それを見たGHQの「民間情報教育局(CIE)」主任教官ウィンフィールド・ニブロは、一計を案じました。

ニブロ「ええこと思いついた!」
ルーチ「なんですの!?」
ニブロ「日本人、焼け野原で暇そうにしてるやん」
ルーチ「暇っちゅうより楽しみがない感じですわな」
ニブロ「そうやろ。それでええこと考えてん。日本人にフォークダンス教えたらどうやろ」
ルーチ「それ、もろニブさんの個人的趣味ですやん。好きやなあ」
ニブロ「それはまあ置いといてや」
ルーチ「ええかもしれませんな、フォークダンス」
ニブロ「日本人、フォークダンス気に入るやろか。気に入るに決まってるよな」
ルーチ「日本には盆踊りっちゅうのがあるみたいやから、みんなで踊る下地はあるんとちゃいますか」
ニブロ「そうやんな。まあ、万一連中が気に入らへんゆうても、うちら天下のGHQやから…」
ルーチ「あんた、めっちゃ悪い顔になってまっせ」
ニブロ「奥さんに”フォークダンスもええ加減にせえ”言われてるけど、仕事にしてしもたら…」
ルーチ「そういう魂胆かいな」
ニブロ「いや、人格者と言われる私が娯楽に飢えた日本人の生活の質を向上させんと…」
ルーチ「苦しいで」
ニブロ「閑話休題」
ルーチ「四文字熟語で逃げたな。で、なにを教えますねん」
ニブロ「”マイムマイム”はどうやろか」
ルーチ「ああ、踊りながら”レッセッセ”いうやつでんな」
ニブロ「いや、それは違う。”ベッサソン”や」
ルーチ「ええ!? そんなん聞いたことあらしまへんで」
ニブロ「あんた関西出身やな」
ルーチ「この会話でわかりますやろ。それ以外のどこに聞こえますねん」
ニブロ「あの歌詞は、”Mayim mayim … be-sasson” やから、日本語やと”ベッサソン”や」
ルーチ「ほんまでっか?」
ニブロ「ほんまもほんま。ちょっと解説してもええ?」
ルーチ「したいんやな」
ニブロ「あれは旧約聖書の預言書、イザヤ書の”U’sh’avetem mayim be-sasson Mi-ma’ayaneh ha-yeshua”をそのまま歌詞にしてるねん」
ルーチ「どういう意味ですのん」
ニブロ「訳すると”あなたがたは喜びをもって、救いの井戸から水をくむ”やな。ヘブライ語で “mayim”は「水」、 “be-sasson”は「喜びのうちに」や」
ルーチ「ほう、ようご存知ですな。こら、ちらちらiPad見るの止めなはれ」
ニブロ「なんのお話かな」
ルーチ「まあええわ。マイムマイムの正しい歌詞は国民的疑問やもんね。知っているようでよう知らへんという」
ニブロ「やろ?」
ルーチ「で、振り付けはどないしますの」
ニブロ「あ、それはもうちょっと後に…」
ルーチ「後、ってどういうことですねん」
ニブロ「あんた、オレと交代することになってるやん?」
ルーチ「まあ、ニブさんの後任は私やけど」
ニブロ「’48年にあんたが私の後任の主任教官になって、その後や」
ルーチ「予言でっか?」
ニブロ「’51年、東方からラリーゆう男が来りてマイムマイムを教えるであろう」
ルーチ「ホンマでっか!」
ニブロ「と、日本フォークダンス連盟の資料に書いてある」
ルーチ「それで、そのラリーからあの踊りを!」
ニブロ「いや、みんなが知ってるあの振り付けはもうちょっと後や」
ルーチ「それはいったい…」
ニブロ「イスラエル人女性グーリット・カドマンさんの来日を待て」
ルーチ「いつですのん」
ニブロ「1963年」
ルーチ「いま、iPad見ましたな」
ニブロ「”振り付けは、現地の踊り方をそのまま日本で指導し定着させたものである”、へえ~」
ルーチ「iPad 隠さへんようになったな」
ニブロ「まあ、それで国民的フォークダンスになったわけやな」
ルーチ「60 年代って、政治とか労働運動方面の人らがようフォークダンスとかやってましたから」
ニブロ「マイムマイムの大々的な普及は、時代の動きにも合うてたいうことやな」

フォークダンスは第二次世界大戦後、日本に紹介され瞬く間に各地に伝播しました。マイムマイムもそのひとつとして、他の曲とともに人々の間に広く浸透していきました。
マイム・マイムは1951年にラリー・キースリーが教えたとされています(日本フォークダンス連盟)。
『マイム・マイム』の原題は “U’sh’avtem Mayim(あなた方は水を汲む)”です。「シオニズム運動(ひと言でいうと、ユダヤ人がイスラエルの地に故郷を再建しようとする運動)」によって現在のイスラエルに戻ってきたユダヤ人が「国を建て、新しい息吹きのもとに未開不毛の地に希望の「水」をひいて開拓にはげむ喜び」をあらわした歌であるとされています。
歌詞のサビである”Mayim mayim be-sasson”は、水源の乏しい乾燥地に入植した開拓者たちが、水を掘り当てて喜ぶさまを表したものです。
なお、上の登場人物ニブロとルーチはいずれも実在のCIE主任教官(ニブロの後任がルーチ)ですが、会話は完全にフィクションです。念のためお断りしておきます。
このことも含めて、このエントリはWikipediaなどを引用・参考に作成した想像妄想憶測です。誰かに話しちゃダメですよ。

下の動画からは、民衆が掘り当てた水(井戸)の周りで輪になって踊り、井戸に駆け寄る様子が表現されているのを見ることができます。
マイムマイムの正しい踊り方

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