小耳にはさんだお話のメモです。出処(どころ)はわかりません。
妊娠中、電車に乗ったら40代半ばのスーツを着た男性が席を譲ってくれた。
お礼を言って座るときその男性の襟元を観ると、見たことがある社章がついていた。
夫と同じ会社の人らしい。
その日、帰宅した夫にそのことを話すと、どんな感じの人だった?と聞かれた。
風貌を話すと、隣の課の課長さんではないかという。
あくる日、夫が会社でその課長さんに尋ねると、やっぱりその人だった。
それ以来、その課長さんは折に触れて「奥さんの調子はどう?」などと話しかけてくれるようになったという。
何か月か経って、私は無事女の子を出産した。
夫はその課長さんにも出産の報告をしたらしい。
「課長さんは笑顔で”おめでとう”と言ってくれたよ」と言っていた。
退院して家に戻ってから、私はその課長さんにお礼の手紙を書いた。
手紙にはベッドで眠っている子どもの写真を同封した。
「その節はお世話になりました。この子はあのときの子です」
その手紙が届いた日、課長さんの家は修羅場になった。